30代になり、身の回りのモノを選ぶ基準が少しずつ変わってきたと感じることはありませんか。 流行のビビッドカラーよりも、肌に馴染むニュアンスカラーや、見ていて心が落ち着く色に惹かれる。それは、私たちが年齢を重ね、日々の暮らしに「安らぎ」や「物語」を求めるようになったからかもしれません。
そんな大人の感性に深く響くのが、日本の「伝統色(和色)」です。 四季折々の植物や空の色から名付けられたその色には、一つひとつに美しい名前と意味が込められています。
本記事では、代表的な「浅葱色(あさぎいろ)」や「茜色(あかねいろ)」などの意味を紐解きながら、現代のファッションやインテリアに違和感なく取り入れるためのヒントをご紹介します。
日本の伝統色が持つ、繊細な魅力
日本の伝統色は、千年以上も前から日本人が自然と向き合う中で生まれた色彩感覚です。 西洋の色彩が科学的な光のスペクトルに基づくことが多いのに対し、日本の色は「植物の染料」や「自然現象」に由来します。そのため、彩度が低めで落ち着いたトーンが多く、現代の「シンプルモダン」や「北欧インテリア」とも驚くほど相性が良いのが特徴です。
浅葱色(あさぎいろ)―爽やかな知性を纏う
【色の意味】
薄い藍色を示す浅葱色は、わずかに緑みを含んだ淡い青色です。平安時代から親しまれ、江戸時代には庶民の着物の裏地としても流行しました。新選組の羽織の色としても有名ですが、本来は「若々しさ」や「爽やかさ」を象徴する色です。

浅葱色のアサギマダラ
【ファッションへの取り入れ方】
- デニムとの相性が抜群: 浅葱色は、インディゴブルーを淡くしたような色味です。白シャツやベージュのパンツと合わせると、清潔感のある大人のカジュアルスタイルが完成します。
- 春夏のアクセントに: リネン素材のストールやシャツで取り入れると、顔周りがパッと明るくなり、知的な印象を与えます。パーソナルカラーが「サマー(ブルベ夏)」タイプの方には特におすすめです。
【インテリアへの取り入れ方】
北欧スタイルとの融合: 浅葱色は、北欧デザインでよく使われる「ブルーグレー」に非常に近い色合いです。グレーのソファに浅葱色のクッションを置いたり、ベッドリネンに取り入れたりすると、静寂でリラックスできる空間を作ることができます。
茜色(あかねいろ)―温もりと安らぎを灯す
【色の意味】
「あかねさす」という枕詞でも知られる通り、夕暮れの空の色を象徴する深く沈んだ赤色です。植物の「茜」の根で染めたことからこの名が付きました。派手な赤ではなく、大地のような温かみを感じさせる色であり、「浄化」や「魔除け」の意味も持っています。

【ファッションへの取り入れ方】
- 大人の差し色として: 真っ赤なリップやニットは勇気がいりますが、茜色のような少し黄みを含んだ深い赤は、日本人の肌(特にイエベ秋タイプ)によく馴染みます。
- 秋冬のニットやバッグ: ブラウンやカーキのアウターに、茜色のニットを合わせると、血色が良く見え、温かみのある女性らしいコーディネートになります。
【インテリアへの取り入れ方】
テラコッタ感覚で使う: 流行の「テラコッタカラー」と同様に、ラグやフラワーベースで取り入れてみましょう。木製家具との相性が非常に良く、部屋全体に温もりと高級感をプラスしてくれます。
利休鼠(りきゅうねずみ)―粋で洗練されたグレー
【色の意味】

茶人・千利休が好んだとされる、緑みを感じるグレーです。江戸時代、派手な色が禁止された中で、人々は微妙な色合いの「四十八茶百鼠」を生み出し、お洒落を楽しみました。
【取り入れ方のヒント】
現代でいう「グレージュ」や「セージグリーン」に近い感覚で使える万能色です。カーテンや壁紙の一部など、大きな面積に使っても圧迫感がなく、部屋を広く上品に見せてくれます。
まとめ:色に込められた「物語」を暮らす
「今日は大事なプレゼンだから、知的な浅葱色を身につけよう」 「家族団らんのリビングには、温かい茜色のクッションを置こう」
伝統色の意味を知ることは、単なる色選びを超えて、自分の気持ちや空間の空気をコントロールする「大人の嗜み」と言えます。 まずはハンカチや箸置きなど、小さな小物から日本の色を取り入れてみてはいかがでしょうか。その繊細な色合いは、忙しい日々にふとした安らぎを与えてくれるはずです。

